2020-11-30

時を越えて

静岡県の鷲津というところで育った女性から数枚の布やねんねこ半纏をいただきました。
昔そこで養蚕をしており、お母さんがくず繭を紡いで糸にし、白生地を織り、染屋に出して染めてもらっていたということです。
中に華やかな一枚がありました。
「ぶつぶつの布は嫌だと言い、きれいなものでしてもらった」
梅や菊、つがいの鶴が鮮やかな色彩で染められています。
子供時代に着たそうです。

八畳間の床の間の柱で整経をしたこと、しゃくりばたで織ったこと、糸を染めたりしたこと、真綿も作ったこと。
ストールにしたり、洋服にしたり…。
お母さんとの糸や布、着るものにまつわるお話をあれこれ話してくださいました。

もう使うことはないし、とっておいても仕方がないということでした。

着なくなりほどいてからも大事に持っておられたのでしょう、思い出とともに。
とっておきの着物だったのでしょう。

女性が家族のために糸を作り布を織る、家族の作った物を着る、そんな時代が実は長くあったのです。

思いがけず手元に届いた布から、あたたかいけれどなんだか切ないような、そんな気持ちになりました。

玉小石 奉書紬 Kinuiro

絹は絹色 あなたはあなた色 もっと自由に ありのままに

お問い合わせはこちら