Process
美しく輝く繭「玉小石」が生まれるのは福井市北西部の山の中。お日様の光をたっぷり浴びたつやつやの桑の葉を食べてお蚕さんは育ちます。
桑の新芽が出そろう5月下旬、ちいさなちいさな卵からお蚕さんが生まれます。生まれたばかりのお蚕さんは、柔らかな新芽が大好き。
お蚕さんは繭づくりのできる体になるまでに4回脱皮します。脱皮の前には「眠(みん)」という、桑を食べずに眠ったように過ごす日があります。
眠りから覚めて一皮脱ぐたびに、お蚕さんは一回り大きくなり、桑を食べる量もぐんとふえます。
一日中桑を食べ、刻々と成長するお蚕さん。何万頭ものお蚕さんが桑を食べる「ザァーッ」という雨降りのような音が聞こえます。
桑つけから約三週間。夢中で桑を食べ続けたお蚕さんが桑を食べ止み、天を仰ぎゆらゆらと頭を揺らして糸を吐くようなしぐさを始めます。
お蚕さんは丸二日かけて糸を吐き、美しい繭を完成させます。このときに、双子の繭「玉繭」とピーナツ型の単繭とに分かれます。
繭から糸ーそして布へ
人の手の速さで、目で、指先で、糸の息吹を感じながら。
乾燥した繭を煮ます。この時の繭の煮方で糸の出方が変わります。
熱いお湯で繭を煮ると、糸がほぐれてきます。その糸を集めて一本の糸を作ります。玉繭は糸が絡み合って出てくるため糸が切れやすく、糸にするには技術が必要です。
引いた糸を綛(かせ)という状態にします。
繭を固めるための成分を取り除きます。ここで絹の持つしなやかさと輝きが現れます。
一本一本の糸の配列を整え、糸に空気を含ませることで、さらなる輝きとやわらかさが生まれます。
米粉を練って糊を作ります。
経糸を木枠に巻き取ります。デザインに応じて木枠を並べていきます。
並べた木枠から整経機に巻き取り、機織り機にかける経糸の準備をします。
経糸が一本づつ交互に正しく上下に開くように、綜絖や筬に糸を通していきます。
緯糸を小管に巻き取ります。
空気をたっぷり含んだ柔らかな糸の風合いを生かすため、張力をかけずゆっくりとしたリズムで織ります。こうすることで立体感のある柔らかな織物になります。