2020-10-15
布を手で作ること
かつての奉書紬は、基本的に白生地で織り上げ、それを染めて紋を入れるなどして紋付きや法衣などに利用されていたようです。
奉書紙のように白くきめ細やかな生地であったということですから、それはさぞ美しかった事と思います。
現代に蘇らせた令和の奉書紬。
それは「玉小石」という繭の性質上、糸に「ふし」が出ます。
玉繭の、手引き糸ならではのゆらぎやふし。それらはふんわりと空気を含みやわらかな織物に仕上がります。
かつて手でするしかなかった時代の手仕事、それはいかに均一に整えるかに重きを置いていたのではないかと想像します。
しかし均一に整ったものを早くたくさん生産できるようになり、機械で作られた「美しい」布があふれかえる今日において、人のリズムのゆらぎ、お蚕さんの吐く糸のゆらぎ、そういったものを生かした手仕事の布は、かつてとは異なる意味を持つのではないかと思っています。